不動産売却時にかかる税金や譲渡所得で利用できる特例
不動産を売却する際には、さまざまな税金や特例が関わってきます。税金の支払いを最小限に抑える方法や特例の活用法を知っておくと、売却時の負担が軽減されます。この記事では、不動産売却に伴う税金や利用できる特例について詳しく解説します。
1.不動産売却時にかかる税金
不動産を売却する時には、さまざまな税金がかかります。詳しくみてみましょう
取引金額 | 不動産売買契約書 |
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超200万円以下 | 1,000円 |
200万円超300万円以下 | 1,000円 |
300万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 160,000円 |
10億超50億円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
記載金額なし | 200円 |
契約書に記載されている「契約書貼付する収入印紙は、売主・買主が平等に負担するものとする」という記載は、売主と買主が印紙代を平等に負担することを意味しています。 しかし、実際の負担方法には、以下の2つのケースがあります。
a.契約書原本を2部作成し、売主・買主がそれぞれ印紙代を負担
この場合、契約書の原本が2部作成され、売主と買主がそれぞれの原本に必要な印紙を貼付し、印紙代を負担します。
b.契約書原本を1部作成し、原本を保管する方が印紙代を負担
この場合、契約書の原本は1部作成され、通常は不動産取引の仲介業者や弁護士などが原本を保管します。この場合、原本を保管する側が印紙代を負担することが一般的です。
これらの方法は、不動産取引における慣習や契約の条件によって異なることがあります。契約書の作成や印紙代の負担については、売主と買主が合意し、契約書に明記されることが重要です。
2. 仲介手数料の消費税
仲介手数料は、売買価格に応じた料率が宅地建物取引業法で定められており、売買契約成立時には売買価格の3%に加えて6万円、そして消費税がかかります。
支払うタイミングは、売買契約成立時に50%、残りの50%は引き渡し完了時に支払われます。
仲介手数料は宅地建物取引業法で以下のように上限が定められています。
売買価格(税込) | 料率(税抜) |
200万円以下の部分 | 5% |
200万円超400万円以下の部分 | 4% |
400万円超 | 3% |
たとえば、不動産の売買価格が400万円を超える場合は、上限料率が3%となりますので、計算式は「仲介手数料=売買価格×3%+6万円+消費税」となります。
売主が物件を売却する際には、抵当権が設定されている場合、売却資金でその抵当権を解消するために「抵当権抹消登記」が必要です。この手続きは、売主の権利を買主に譲渡する前に行われます。通常、抵当権抹消登記と所有権移転登記は決済日に一緒に行われます。また、売主の住所が変更されている場合には「住所変更登記」も必要です。
抵当権抹消登記の場合、登録免許税の費用は1物件につき1,000円です。1物件とは、土地が1筆であり、建物が1つの建物である場合を指します。たとえば、一戸建ての場合、土地と建物2件分の登録免許税がかかります。登録免許税の支払いは、登記申請時に司法書士の報酬と一緒に請求され、指定された金額の印紙を貼ることで印紙税も納められます。
4. 譲渡所得税
不動産を売却する際には、売却益に譲渡所得税がかかります。売却益が発生していた場合は確定申告を行い、納税をしましょう。計算方法は次項で詳しく解説します。
2.譲渡所得税の計算方法
譲渡所得は、売却時の価格ではなく、取得費用と売却費用を売却金額から差し引いて算出されます。この章では、譲渡所得税の計算方法を解説します。
建物取得費の計算式は以下のようになります。
建物取得費 = 建物の購入価額 – 減価償却費相当額
減価償却費は以下の式で計算されます。
建物の購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
建物の償却率は、建物の構造によって異なります。木造の場合は0.031、鉄筋・鉄骨コンクリート造の場合は0.015が一般的です。
なお、購入価格が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として申告します。たとえば、2,000万円で家を売却した場合、概算取得費は100万円となります。
売却益(譲渡所得)= 売却価格 売却価格から以下の3つの費用を差し引く ① 物件の購入価格から減価償却費※を引いた価格(購入したときの価格) ② 購入したときの費用(取得費) ③ 売却したときの費用(譲渡費) |
減価償却費 = 建物購入価額×0.9×償却率×経過年数 (経過年数は築年数ではなく、購入の引渡から売却の引渡までの所有期間を表します) 売却価格とは、家やマンションなどの不動産が売却された際の金額を指します。
取得費は、不動産を購入する際に支払った費用を指します。具体的には、土地や建物の購入価格、建築費用、手数料、税金などが含まれます。ただし、建物の場合は経年劣化による価値の減少を考慮するため、減価償却を考慮する必要があります。
譲渡費は、不動産を売却時に発生した費用を指します。仲介手数料や印紙税、土地の測量費用、建物の解体費用などが該当します。
譲渡所得にかかる所得税と住民税は、不動産売却した年の1月1日現在の所有期間(その不動産を所有していた期間が5年以下か5年超か)で変わってきます。
不動産を所有していた期間 | |||
区分 | 短期 | 長期 | |
期間 | 5年以下 | 5年超 | 10年超所有軽減税率の特例 |
居住用 | 39.63% 所得税30.63% 住民税 9% | 20.315% 所得税5.315% 住民税 5% | ①課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%(所得税10.21%・住民税4%) ②課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%(所得税15.315%・住民税5%) |
非居住用 | 39.63% 所得税30.63% 住民税 9% | 20.315% 所得税15.315% 住民税 5% |
※2013年から2037年までは復興特別所得税として所得税額の2.1%が加算されます
不動産の所有期間によっては所得税と住民税が大きく変わってしまうため、売却するタイミングに注意しましょう。
3.譲渡所得で利用できる特例
次に、譲渡所得で利用できる特例をいくつかご紹介します。
譲渡所得から最大3,000万円まで控除を受けることができる特例です。
特別控除を利用する際には、いくつかの注意点があります。
まず、今住んでいる住宅を売却して3,000万円の特別控除を利用して新たに住宅を購入する場合、住宅ローン控除は使用できません。
次に、特例を適用するためには、売却される不動産が所有者の居住用である必要があります。所有者が住んでいた住宅であっても、一定期間が経過すると特例が適用されません。
最後に、通常、相続したマイホームには特例が適用されません。ただし、要件を満たしていれば相続した住宅でも「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」という特例を利用することができます。
詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
2. 所有期間10年超の物件に対する軽減税率の特例
この特例は、自らの居住用のマイホームを売却した際に適用され、一定の要件を満たすことで長期譲渡所得税の税率を軽減するものです。
特例を受けるための基本的な要件は、売却物件が自分の居住用財産であり、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていることです。
通常、長期譲渡所得に対する税率は20.315%ですが、この特例を利用すると、課税譲渡所得の最初の6,000万円までが14.21%まで軽減されます。ただし、6,000万円を超える部分については通常の税率が適用されます。
詳細は以下のとおりです。
譲渡所得 | 所得税 | 住民税 | 合 計 |
課税譲渡所得が 6,000万円以下 | 10.21% | 4% | 14.21% |
譲渡所得 | 所得税 | 住民税 | 合 計 |
課税譲渡所得が 6,000万円超(6,000万円以下の部分) | 10.21% | 4% | 14.21% |
課税譲渡所得が 6,000万円超(6,000万円超の部分) | 15.315% | 5% | 20.315% |
なお、この特例は「3,000万円の特別控除の特例」と併用可能です。
詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
4.売却でかかる税金の納付時期や納付方法
不動産を売却して譲渡所得が生じた場合、確定申告が必要になります。
確定申告の計算期間は1月1日から12月31日までの1年間です。必要な書類を用意して、2月15日から3月15日の間に提出しましょう。
◎確定申告の手順
1.課税譲渡所得を計算する。
2.必要書類を準備する。
3.確定申告書を作成する。
4.税務署に訪問するか、電子申告で手続きを行う。
5.納税か還付を受ける
申告書を提出した後は、還付を受けるか、納税します。還付を受ける場合は、申告書に記入した金融機関の口座に振り込まれます。
◎納税の方法
・振替納税を利用する
・現金で納付する
・国税電子申告・納税システム(e-Tax)で納付する
・クレジットカードで納付する
◎確定申告に必要な書類
・譲渡所得の内訳書…不動産の概要や売却金額、費用などを記載した書類。税務署から送付されるので、記入して提出します。
・譲渡時の書類…売買契約書や売買代金受領書、固定資産税精算書、仲介手数料の領収書などのコピー。
・取得時の資料…不動産を取得した際の売買契約書や固定資産税精算書、仲介手数料の領収書などのコピー。
・売却した不動産の全部事項証明書…法務局で入手できます。特例の申告では原本の提出は必要ありません。
5.まとめ
不動産売却にはさまざまな税金がかかりますが、売利益が発生した場合は確定申告を行い、納税をしましょう。節税については、譲渡所得で利用できる特例を活用することで負担を軽減できます。不動産売却を検討している方は、この特例を上手に活用して節税のポイントを押さえることが重要です。