【住宅の耐用年数】古い住宅を購入するメリットデメリットは?
住宅の耐用年数について理解することは、不動産売買の際に重要です。
住宅の資産価値は年月が経つにつれて変化し、その変化を知ることで将来的な購入や売却の判断がしやすくなります。
また、古い住宅を購入する際のメリットとデメリットもあわせて解説します。
1.住宅の耐用年数について
耐用年数は、大きく分けて以下の3種類があります。
1.法定耐用年数(耐用年数) 特定の資産や設備の減価償却費用を算出するために国が決めた年数のことです。建物の種類や構造、用途によって一律に定められています。この法定耐用年数によって建物の資産価値を判定します。
2.物理的耐用年数 建物自体が劣化し、構造物の仕組みや材質の品質が維持できなくなるなど、実際に使用できなくなるまでの年数を指します。これは建物そのものの耐久性や劣化の度合いを考慮し、構造的な要素や材料の品質が低下することによって示唆される耐用年数です。
3.経済的残存耐用年数 不動産が実際にどの程度継続して使用でき、不動産としての価値が低下し、最終的になくなるまでの期間を示します。これは物理的な劣化だけでなく、将来的な補修や修繕費用、建物の機能の見込まれる寿命も考慮されます。 |
この3つの中で最も目にするのが法定耐用年数ですね。法定耐用年数によれば、木造は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造は47年とされています。
ここでひとつ注意していただきたいのは、法定耐用年数は税法の資産価値がゼロになるまでの年数を国が定めただけあって、実際に何年まで住めるのかを示しているわけではないという点です。法定耐用年数はあくまでも減価償却費※を算出する際に使うための数字で、法定耐用年数では22年や47年であっても、これ以上の期間も住み続けることが可能です。
※減価償却費とは?
詳しくは後述しますが、簡単に説明すると、『不動産の価値が減少することを考慮し、その減少分を毎年一定の割合で経費として計上すること』を減価償却費と呼びます。
1. マンション
マンションの税法上の耐用年数は、47年。コンクリート造だけあって、一戸建てに比べて耐用年数が長めです。
ちなみに、国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」によれば、鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命は推定で117年とされています。日本のマンションの歴史が浅いため、117年というのは推定に過ぎませんが、耐用年数である47年を過ぎてもなお、現役のマンションが多数存在しているのが興味深いですね。
先に説明したとおり、耐用年数は建物の寿命ではなく、税法上の資産価値がゼロになるまでの年数を示したものです。マンションの場合は特に寿命が長いので、耐用年数よりも資産価値で考えた方が分かりやすいかもしれません。
以下は、築年数による資産価値の変動をまとめたものです。
築10年以内: 新築の8割程度
築11~20年: 新築の6~7割程度
築21~30年: 新築の4割程度
築30年超: 新築の4割以下
マンションの資産価値は、築10年以内には新築の8割程度まで下落し、築15年頃には下げ止まります。マンションは築浅なほど需要が高まるため、売却を考える際には築6~15年の間が売り時とされています。購入後5年以内の売却は赤字になるケースは多いですが、マンションを売却するなら早めのご検討をおすすめします。
2. 木造一戸建て
木造住宅はメンテナンスや造り方によって寿命が左右されますが、22年を過ぎてもなお現存する住宅は数多く存在します。また、いくつかのハウスメーカーでは60年保証や100年住宅といった取り組みも見受けられます。
以下は、木造一戸建ての築年数による資産価値の動きをまとめたものです。マンションと比較すると資産価値の下落スピードが速いのでビックリする方も多いかもしれません。
築10年以内: 新築の5割程度
築11~20年以内:築15年で新築の2割程度
築20年超: 資産価値はほぼゼロ
一戸建ての場合はマンションに比べて資産価値の減少スピードが速く、築10年以内には新築の5割程度、築15年を目安に下落幅がゆるやかになり、新築の2割まで下落します。そして築30年を超えると建物部分の資産価値はほぼゼロとなります。残る資産価値は土地です。
しつこいようですが、上記は建物の寿命ではなく、資産価値です。いつまで住めるかを表した数字ではありません。この点を勘違いしてしまうと「一戸建てはマンションよりも早く住めなくなる!」という認識になってしまいます。
確かに耐用年数はマンションの方が長いですし、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が素材としては頑丈なのは間違いありません。しかし、管理状態によってはマンションよりも木造一戸建ての方が「建物としての状態が良好」なケースは多々あります。
2.耐用年数と減価償却の関係
耐用年数は、税法上の資産価値がゼロになるまでの年数を示したものだと説明しました。もっと専門的な言い方をすると、耐用年数とは、減価償却を算出するための指標です。ちょっと難しい内容ではありますが、知っておいて損なことではありません。特に不動産売却を検討されている場合は、耐用年数と減価償却の関係についても知識を身につけておく必要があります。
1. 減価償却とは
減価償却とは、建物の価値が減少することを考慮し、その減少分を毎年一定の割合で経費として計上することを指します。
減価償却は時間の経過とともに価値が減少する前提に基づいているため、土地は減価償却に含まれません。
2. 減価償却を使う時はいつ?
減価償却の計算が必要なケースは、主に以下の2つです。詳しく見ていきましょう。
1.賃貸収入で得た収入を確定申告する時
アパートやマンションの経営によって得た賃料収入は、不動産所得として確定申告が必要です。この不動産所得には所得税が課されますが、建物の価値が経年劣化する分を「減価償却費」として賃料収入から差し引くことができます。これにより所得税の節税が可能となりますので、減価償却費の計上を忘れずに行うことが重要です。
2.不動産を売却する時
不動産を売却して得た利益は「譲渡所得」として所得税や住民税の対象になります。この際、譲渡所得の計算には建物の取得費が必要です。土地は年月が経っても価値が減少しないので、購入価格がそのまま取得費になります。
取得費とは、建物の購入代金とそれに関連する諸費用の総額を指します。譲渡所得の計算式は、収入金額から(取得費から減価償却費を差し引いた額)と譲渡費用を差し引きます。
3. 減価償却の計算方法
不動産を住居用として取得した場合の減価償却計算方法を解説します。
減価償却には「定額法」と「定率法」という2つの方法があります。
・定額法 耐用年数の期間内において毎年一定の金額を減価償却する方法です。この方法では、年数が短いほど利益が残りやすい特徴があります。 計算式:減価償却費=取得価格×定額法の償却率 ・定率法 未償却の残高に対して毎年一定の割合を適用し減価償却する方法です。初期の方で多くの減価償却費がかかり、年々低減していきます。 計算式:減価償却費=未償却残高×定率法の償却率 |
償却率は国税庁「減価償却資産の償却率等表」で確認できます。
3.古い住宅を購入するメリット
ここまで住宅の耐用年数や減価償却について解説しましたが、築年数が経過した古い住宅を購入するメリットもおさえておきましょう。
1. 新築よりも安く手に入る
新築の住宅は施工や設備が最新である一方で、その分価格も高額です。一方で、築年数が経過した古い家は、新築に比べて安く手に入ることがあります。
ただし、リフォームやメンテナンスに投資が必要な場合があるため、トータルのコストを検討することも重要です。
2. 物件数が豊富
家を建てられる土地は限られています。そのため、これから建つ新築の数よりも、今すでに建っている中古住宅の方が多いのは当然ですね。
中古住宅も視野に入れれば、選択肢がぐっと増えます。歴史や個性を感じることができる古い住宅も多く、自分の好みやライフスタイルに合った住宅を見つけやすい点もメリットです。
3. リノベーションを楽しめる
古い住宅は時間の経過とともに変化し、その歴史や個性が感じられます。古い建材やデザインを活かしながら、自分だけのオリジナルな住まいを実現することができます。
ただ、中古住宅購入+リノベーションを行うことで新築住宅よりもコストがかかる可能性もありますので、資金計画は慎重に行いましょう。
4.古い住宅を購入するデメリット
続いて、古い住宅を購入するデメリットを解説します。
1. 老朽化が気になる
古い住宅の場合、屋根や壁、設備だけではなく、電気配線や配管なども古くなっていることがあります。老朽化が進んでいる場合、メンテナンスやアップグレードにかなりの費用がかかる可能性があるため、注意が必要です。
老朽化のチェックは、一般の方には困難です。不安な方は、住宅診断(ホーム・インスペクション)を検討することをおすすめします。
2. 設備の機能性が新築よりも劣る
古い住宅は、新築に比べて最新の設備や機能が備わっていないことが一般的です。特に、キッチンやバスルーム、暖房設備などは年月が経つにつれて進化しているため、効率性や快適性において新しい物件に及ばないことがあります。
また、省エネ性やセキュリティの向上など、現代の住まいに求められる要件が満たされていない可能性もあります。
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3. 将来売却しても売れにくい可能性がある
古い住宅は、耐用年数が進んでいるため、将来的に売却する際に魅力を保つことが難しい可能性があります。
同じ価格帯で新しい物件が出てきた場合には競争が厳しくなりますし、古い住宅には修繕やリノベーションが必要な場合があり、これにかかる費用も買い手にとってネガティブな要素となり得ます。
4.まとめ
今回の記事では、主に住宅の耐用年数と古い家を購入するメリットデメリットを解説しました。繰り返しになりますが、住宅の耐用年数は、あくまでも減価償却費を算出する際に使うための数字で、実際に何年まで住めるのかを示しているわけではありません。
耐用年数を過ぎた家でも快適に住める住宅は多数あります。中古住宅を探している、という方はぜひ一度ミツバハウジングまでお問い合わせください。