不動産の売却手段として、仲介と買取はしばしば比較されます。仲介では不動産会社が売買契約を仲介し、買主を見つける過程で価格が決定されます。一方、買取では不動産会社が直接物件を購入し、手間がかからず迅速な現金化が可能です。本記事では、両者の違いについて詳しく解説します。
仲介と買取は、不動産や商品の取引において重要な役割を果たしますが、その仕組みや特徴には大きな違いがあります。
不動産会社は売主の代理として販売活動を展開します。たとえば、物件のポスティングや不動産ポータルサイトへの掲載を行い、物件の魅力を最大限にアピールします。そして、物件が無事に売れた際には、成功報酬として売主と買主、またはどちらか片方から仲介手数料を受け取ることで収益を得ます。
2. 買取とは
買取は、不動産会社が直接物件を買い取ることを指します。買取での売却では、買主は個人のお客様ではなく不動産会社となります。
仲介で必要な販売活動は一切行わず、不動産会社が提示した査定額に売主が納得すれば、すぐに売却が完了します。シンプルかつ迅速な取引が特徴の買取は、即現金化を希望する売主にとって理想的な方法と言えるでしょう。
不動産の売却における仲介には、以下の3つの種類があります。それぞれに特徴があり、売主のニーズや状況に応じて選ぶことが重要です。
専属専任媒介契約は、売主が1つの不動産会社にのみ売却を依頼する契約です。売主は自分で買主を見つけることができません。不動産会社が売却活動を全面的に担当します。3つの契約の中で、一番縛りが強い方法です。
契約有効期間 | 無制限 |
不動産会社との契約 | 契約できるのはひとつの不動産会社に限る。同時に複数の不動産会社とは契約できない。 |
自分で買主を見つける(自己発見取引) | 自分で買主を見つけて契約することができない。 |
売却状況の報告義務 | 7日に1回以上の頻度で依頼者に販売状況を報告することが義務付けられている。 |
レインズ(指定流通機構)の登録義務 | 依頼を受けた物件情報を5日以内にレインズ(指定流通機構)に登録することが義務付けられている。 |
売主にとって縛りが強すぎる方法ではありますが、不動産会社の集中したサポートが受けられ、早めに売却が成功することが期待できます。
この方法も、専属専任媒介契約と同様に、売主が1つの不動産会社に売却を依頼する契約ですが、売主自身で買主を見つけることも可能です。専属専任媒介契約ほど縛りは強くありません。
契約有効期間 | 3ヵ月 |
不動産会社との契約 | 契約できるのはひとつの不動産会社に限る。同時に複数の不動産会社とは契約できない。 |
自分で買主を見つける(自己発見取引) | 可能。不動産会社を仲介人とする必要もない。 |
売却状況の報告義務 | 14日に1回以上の頻度で依頼者に販売状況を報告することが義務付けられている。 |
レインズ(指定流通機構)の登録義務 | 依頼を受けた物件情報を7日以内にレインズ(指定流通機構)に登録することが義務付けられている。 |
複数の不動産会社と同時契約はできませんが、売主が自分で買主を見つけて売却することは可能です。1つの不動産会社が集中して販売活動を行うため、効率的な売却が期待できます。
契約有効期間 | 3ヵ月 |
不動産会社との契約 | 複数の不動産会社と同時に契約することが可能。 |
自分で買主を見つける(自己発見取引) | 可能。不動産会社を仲介人とする必要もない。 |
売却状況の報告義務 | 売主への売却状況報告は、義務付けられていない。 |
レインズ(指定流通機構)の登録義務 | 義務付けられていない。 |
この方法は、幅広く売却活動を行うことができ、多くの不動産会社のネットワークを活用できます。売主自身が積極的に売却活動を行うことも可能です。複数の不動産会社の力を借りて、幅広く売却活動を行いたい方に向いています。
ただし、不動産会社側から「他社にも依頼している」と見なされるため、販売活動の熱意が低くなる可能性があります。
続いて、仲介のメリットデメリットを解説します。まずはメリットからみていきましょう。
仲介を利用することで、買取よりも高い売却価格が期待でき、幅広いマーケティング活動や専門的なサポートを受けながら、安心して取引を進めることができます。買取よりも売却に時間はかかりますが、時間的制約がないのなら仲介の方が高い利益を得られる可能性が高いです。
2. 手間が省ける
買取よりも高い売却価格が期待できるだけでなく、売主の手間を大幅に省くこともできます。売却に関わる売却活動のすべてを不動産会社が代行してくれるため、売主自身が多くの手間をかける必要がありません。物件の宣伝、内見の調整、契約書の作成、交渉など、面倒な手続きを不動産会社が一手に引き受けてくれます。
3. 契約の安全性を担保できる
不動産の売買契約書と重要事項説明書には、不動産会社が仲介業者として記名押印を行います。これにより、不動産会社が書面を作成し、その内容を調査したことが証明されます。そのため、書面上の不備や告知義務の漏れがあった場合でも、不動産仲介業者が責任を負うことになり、売主だけに責任が集中することなく、契約の安全性を担保できます。
仲介には、契約の安全性や高い売却価格が期待できるなどの多くのメリットがありますが、デメリットもいくつかあります。
1. 仲介手数料がかかる
無事売却となった際、不動産会社に対して仲介手数料を支払う必要があります。不動産の売買仲介では通常、物件価格の3%+6万円が仲介手数料の上限として定められています。そのため、売却価格が高いほど手数料も高額になります。これが一番のデメリットと言えるでしょう。
2. 複数の会社に依頼できない場合がある仲介手数料がかかる
先に述べたとおり、仲介には専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3種類があります。専属専任媒介契約を選択した場合、1社にしか仲介を依頼できません。選択した契約形態によってはデメリットになる可能性がありますので注意が必要です。
続いて、買取のメリットを解説します。
1. 仲介手数料がかからない
買取では、不動産会社が直接物件を買い取るため、仲介手数料が発生しません。売主の負担が軽減されます。ただし、仲介手数料がかからないから得というわけでもなく、結果的に仲介で売却した方が利益がよかったケースもあります。
2. 短期間で売却(現金化)できる
買取では、不動産会社が直接物件を買い取るため、売却のスピードが非常に速いです。市場に出して買主を探す必要がなく、不動産会社の提示する査定額に納得すれば、即座に売却手続きが進められます。そのため、数日から数週間で現金化が可能となります。
3. 契約不適合責任が免除される
不動産の売買契約において、通常は契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)というものがあります。しかし、買取では不動産会社が直接物件を買い取るため、売主は契約不適合責任を免除されることが一般的です。物件の隅々まで調査し、リスクを理解した上で買取価格を設定するため、売却後に不具合が見つかったとしても、それは不動産会社の責任となります。
4. 近所に売却することがバレない
仲介による売却では、物件の情報を広く知らせるために、物件を広く告知するためにポスティングやチラシチラシ配布などの活動が行われることがあります。しかし、買取ではこうした掲載は一切行われません。不動産会社が直接買い取るため、物件の情報が広く公開されることがないのです。購入希望者の内覧対応も不要で、査定も一回で済むため、近所に知られたくないという方にとって、買取は非常に適した方法と言えます。
買取にもデメリットがあります。
1. 仲介よりも売却価格が安くなりやすい
不動産会社が物件を買い取る際、物件はそのまま再販されるわけではありません。通常、リフォームやメンテナンスが施され、市場に再び出されます。これには多くの手間と費用がかかります。リフォーム費用、広告宣伝費、販売活動費用などが含まれます。これらの費用を差し引いた上で、さらに利益を確保する必要があるため、買取価格は市場価格よりも低く設定されます。
買取価格は、一般的に仲介での売却価格の60%~80%になることが多いです。たとえば、3,000万円の物件なら1,800万円~2,400万円で買い取られることが一般的です。これは、相場の7~8割程度に相当します。
2. 物件によっては買取できないことがある
リフォームしても再生が難しいほど老朽化している物件は、不動産会社に買取を断られることがあります。
不動産会社の判断基準はそれぞれ異なるため、物件が買取可能かどうかは、実際に査定をしてみないことにはわかりません。老朽化が進んでいる物件であっても、不動産会社によっては買取を前向きに検討してくれる場合があります。そのため、まずは信頼できる不動産会社に査定依頼をしてみることが重要です。査定の結果次第で、買取可能かどうか、または他の売却方法を検討するかを判断することができます。
仲介と買取は、異なる売却方法であり、それぞれに向いている人がいます。
【仲介に向いている人】
・メリットを重視する人
物件の売却価格を最大限に引き上げたい人には、仲介が向いています。仲介では、複数の買い手候補と交渉し、競争原理を活かして最適な価格で物件を売却できる可能性があります。
・時間に余裕のある人
物件の売却に時間がかかっても構わない人には、仲介が向いています。仲介では、物件の買い手を見つけるまでに時間がかかる場合がありますが、その分より高い価格での売却が期待できます。
・柔軟性を求める人
売却条件や価格交渉などに柔軟に対応したい人には、仲介が向いています。買い手と直接交渉することで、細かな条件の調整や価格交渉が可能です。
【買取に向いている人】
・すぐに現金化したい人
すぐに現金化したい人には、買取が向いています。買取では、物件を迅速に売却し、即金化することができます。
・手間をかけたくない人
物件の内覧対応や買い手との交渉など、手間をかけたくない人には、買取が向いています。買取では、不動産会社が直接買い取るため、売主の手間が軽減されます。
・売却価格よりも安定性を求める人
売却価格よりも、確実性や安定性を重視する人には、買取が向いています。買取では、仲介よりも売却価格は低くなりがちですが、迅速かつスムーズに売却することができます。
仲介と買取はそれぞれ異なる売却方法であり、売主の状況やニーズによって適した方法が異なります。売却価格を最大限に引き上げたい、柔軟な売却条件を求める場合には仲介、スピードや手間の軽減を求める場合には買取が向いています。自身の状況や優先順位を考慮し、最適な売却方法を選択することが重要です。
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家を相続すると、多くの人が相続税の支払いを心配するものです。しかし、実際には相続税がかからないケースも少なくありません。この記事では、家を相続しても相続税がかからない主なケースについて詳しく解説します。基礎控除額の範囲内に遺産総額が収まる場合や配偶者控除、小規模宅地等の特例の適用がある場合など、具体的な条件を確認していきましょう。また、相続税がかかるかどうかを判断する手順や、相続税を払えない場合の対処法についてもご紹介します。
家を相続すると、たとえそれが自宅であっても相続税の対象になります。しかし、特定の条件を満たすと相続税がかからないことが多いです。以下の条件を満たす場合には、相続税が免除される可能性があります。
相続税には基礎控除額が設けられており、この範囲内に収まる遺産については非課税となります。
【基礎控除額の計算式】
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が配偶者と子供1人の場合、基礎控除額は以下のようになります。
3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円
この4,200万円の範囲内に、自宅の評価額を含めた遺産総額が収まる場合には、相続税はかかりません。例を挙げてみましょう。
自宅の評価額(プラスの財産):3,000万円
現預金(プラスの財産):1,000万円
株式(プラスの財産):500万円
借入金(マイナスの財産):500万円
この例の場合、プラスの財産合計4,500万円からマイナスの財産500万円を差し引くと、遺産総額は4,000万円となります。この金額は基礎控除額の4,200万円以内に収まるため、相続税は発生しません。
2. 配偶者控除が適用できる場合
配偶者控除は、配偶者が相続する財産に対して適用される特例で、大きな控除額が認められています。具体的には、以下の2つの条件のいずれかを満たす場合に、相続税がかかりません。
・1億6,000万円までの相続財産
配偶者が相続する財産の合計が1億6,000万円以下であれば、相続税はかかりません。
・法定相続分までの相続財産
配偶者が法定相続分(相続財産の半分)を相続する場合、その範囲内であれば相続税はかかりません。
仮に、以下のような財産があったとします。
自宅の評価額:8,000万円
現預金:6,000万円
株式:2,000万円
配偶者がこれらすべてを相続した場合、相続財産の合計は1億6,000万円となり、配偶者控除の適用により相続税はかかりません。
なお、配偶者控除の適用要件は以下のとおりです。
・配偶者控除の適用要件
法律上の配偶者であること
相続税の申告書を提出すること
遺産分割が確定していること
3. 小規模宅地等の特例が適用できる場合
小規模宅地等の特例を利用することで、相続税が大幅に軽減される可能性があります。この特例を適用すれば、自宅が建っている土地の評価額を最大80%まで減額できるため、遺産総額が基礎控除額内に収まることが期待できます。
ただし、注意点として、この特例は建物自体の評価額を減額するものではなく、土地の評価額に適用されるものです。また、誰が相続するかによって適用要件が異なるため、細かい条件を確認する必要があります。
【小規模宅地等の特例を適用するための要件】
配偶者が相続する場合
・対象の土地が被相続人の自宅の敷地であること
・その土地を相続するのが配偶者であること
同居親族が相続する場合
・対象の土地が被相続人の自宅の敷地であること
・その土地を相続するのが同居していた親族であること
・相続税の申告期限まで対象の土地を所有していること
・相続税の申告期限までその土地にある建物に居住していること
同居以外の親族が相続する場合(被相続人が一人暮らし)
・対象の土地が被相続人の自宅の敷地であること
・その土地を相続するのが同居していない親族であること
・被相続人に配偶者がいない(死別・離別含む)こと
・相続開始前3年以内に日本国内にある取得者やその親族が所有する家屋に居住していないこと(被相続人が住んでいた家を除く)
・相続開始時に取得者が他の家屋を所有していないこと
・相続開始から相続税の申告期限まで対象の土地を所有していること
この特例は、同居していた家族が相続税の負担で自宅に住めなくなることを防ぐために設けられた制度です。原則として、配偶者や同居親族のみが適用できますが、被相続人が一人暮らしをしていた場合に限り、同居していない親族も要件を満たせば適用可能です。
自宅が相続税の大部分を占めることが多いため、この特例を適用できるかどうかをしっかり確認することが重要です。不明な点があれば、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
次に、法定相続人を確定し、基礎控除額を計算します。法定相続人とは、民法で定められた相続権を持つ人たちのことです。基礎控除額は、相続税の非課税枠を決めるもので、以下の計算式で求められます。
基礎控除額の計算式
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が配偶者と子供1人の場合の基礎控除額は以下のようになります。
3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円
法定相続人を確定するには、戸籍謄本などの公式書類を調査し、正確な相続人の数を把握します。これにより、基礎控除額が決まり、相続税がかかるかどうかの判断が可能となります。
具体例として、次のようなケースを考えてみましょう。
配偶者
子供1人
この場合、法定相続人は2人となり、基礎控除額は4,200万円です。
次に、遺産総額を計算し、基礎控除額と比較します。遺産総額が基礎控除額以内であれば、相続税はかかりません。
思いのほか相続税が高額だったりすると、納期限までに相続税を払えない場合があります。そんなときのために、いくつかの納税資金を用意する方法があります。ここでは、相続税を払えないときの対処法をご紹介します。
以下の方法は、すべての相続人の同意が必要です。
不動産や書画骨董などを売却して現金化します。現金に換えれば、そのお金で相続税を納付できます。ただし、不動産の売却には、名義を相続人に変更する相続登記が必要です。また、すぐに売却できない場合もあるため、早めの対策が必要です。
預貯金など、すぐに分割できる財産のみ先行して遺産分割協議を行い、その資金を納税に充てます。その後、不動産など現金化しにくい財産の遺産分割協議を行います。
2. 相続人全員の同意を得られなかった場合
相続人全員の同意が得られなくてもできる対処法もあります。
相続税を納期限の10ヵ月以内に納付できない場合、要件を満たし担保を準備できれば、分割払い(年払い)が可能です。延納の担保には、国債、地方債、社債、土地、建物などが使用できます。ただし、延納には利子税がかかります。
相続税を払えず、延納もできない場合、一定の要件を満たせば相続財産による物納が認められています。物納できる相続財産には優先順位があり、第1順位は不動産、国債、地方債、上場株式など、第2順位は非上場株式、第3順位は動産です。
相続税の納税資金がない場合、金融機関からお金を借りる方法もあります。ただし、利息も含めて返済が必要なため、負担が大きくなるかもしれません。しかし、国が認める延納でも利子税を支払う必要があるため、融資金利が延納の利子税よりも低い場合は、金融機関から借りるのも一つの方法です。
これらの対処法を検討し、適切な方法を選びましょう。
家を相続しても相続税がかからないケースとして、基礎控除額の範囲内に遺産総額が収まる場合や、配偶者控除、小規模宅地等の特例の適用がある場合が挙げられます。これらの条件を満たしていれば、相続税の心配は不要です。さらに、相続税がかかるかどうかを判断するための具体的な手順を踏むことで、適切な対処が可能です。万が一相続税を払えない場合でも、延納や物納などの対策があります。相続に関する知識をしっかりと身につけ、適切な手続きを行いましょう。
不動産を相続する際には、その評価額や税金についての正しい知識を持つことが非常に重要です。不動産の相続税評価額を適切に理解し、特定の条件下で評価額を減額できるケースを知ることで、相続税の負担を軽減することが可能です。また、不動産を相続した後には、固定資産税や登録免許税、さらに売却時には印紙税や譲渡所得税など、さまざまな税金が発生します。本記事では、不動産の相続に関する税金の評価額や減額のケース、具体的にかかる税金について詳しく解説します。
不動産の相続税評価額について、土地と建物のそれぞれの算出方法を詳しく説明します。評価の詳細については、国税庁の公式サイトや税理士などに相談してください。
建物の評価額は固定資産税評価額と同じです。相続税を計算する際には、固定資産税評価額がそのまま利用されます。
相続税の計算において、建物の評価額を知るためには市町村から送られてくる固定資産税評価額を確認してください。
2. 土地の相続税評価額
土地の相続税評価額については、主に以下の2つの方法で評価されます。
相続税の計算において、建物の評価額を知るためには市町村から送られてくる固定資産税評価額を確認してください。
【路線価方式】
市街地の土地に適用されます。
国税庁が毎年発表する価格で、土地が面する道路ごとに決定されます。通常、地価公示価格の80%程度です。
評価方法:路線価に土地の面積を掛けて評価額を算出します。
例: 路線価が「200千円/㎡」、土地の面積が「150㎡」の場合、
評価額 = 200千円/㎡ × 150㎡ = 30,000千円(3億円)
【倍率方式】
路線価が設定されていない地域の土地に適用されます。
倍率:国税庁が地域ごとに発表する倍率表を基に計算します。
評価方法:固定資産税評価額に倍率を掛けて評価額を算出します。
例: 固定資産税評価額が「50,000千円」、倍率が「1.1」の場合、
評価額 = 50,000千円 × 1.1 = 55,000千円(5.5億円)
相続税評価額を減額できるケースはいくつかあります。その中でも、借地権が設定されている土地の相続に関しては、相続税評価額を減額できる代表的な例です。以下に詳しく説明します。
【条件】
1.三大都市圏:地積が500㎡以上の宅地
2.三大都市圏以外:地積が1,000㎡以上の宅地
【三大都市圏の定義は?】
三大都市圏とは、以下のように定義された地域を指します。
・首都圏:首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地または同条第4項に規定する近郊整備地帯
・近畿圏:近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域または同条第4項に規定する近郊整備区域
中部圏:中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
【地積規模の大きな宅地に含まれない場合】
以下の条件に該当する場合、地積規模の大きな宅地の条件を満たしていても、評価額の減額は適用されません。
・市街化調整区域や、都市計画法で工業専用地域と指定されている地域
・容積率が400%(東京都の特別区では300%)以上の地域にある宅地
【評価方法】
「地積規模の大きな宅地」と認定されると、その評価額は一定の減額が適用されます。具体的な減額率や評価方法は国税庁のガイドラインをご確認ください。
【貸家建付地の相続税評価額の計算方法】
貸家建付地の相続税評価額は以下の式で求められます。
評価額 = 自用地の価額 -(自用地の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
自用地の価額:その土地が借地権などの制約なしに自由に利用できる場合の評価額。
借地権割合: 土地の評価額に対して借地権が占める割合。地域によって異なり、路線価図や評価倍率表で確認します。
借家権割合: 建物を借りる権利の価値を示す割合。一般的に30%とされています。
賃貸割合: 賃貸されている部屋の専有面積の合計 ÷ 賃貸物件の専有面積の合計。
【具体例】
たとえば、自用地の価額が1億円、借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%の場合:
自用地の価額: 1億円
借地権割合: 60% = 0.60
借家権割合: 30% = 0.30
賃貸割合: 100% = 1.00
評価額の計算:
評価額 = 1億円 -(1億円 × 0.60 × 0.30 × 1.00)
評価額 = 1億円 -(1億円 × 0.18)
評価額 = 1億円 – 1,800万円
評価額 = 8,200万円
したがって、貸家建付地の相続税評価額は8,200万円となります。
道路に面する部分の幅(間口)が狭い土地。
・奥行きが短かったり長かったりする土地
奥行きのバランスが悪く、利用に制限がある土地。
次に、不動産を相続したときに発生する税金について解説します。
不動産を相続してそのまま所有する場合、固定資産税(およびエリアによっては都市計画税)が課税されることになります。
【固定資産税とは?】
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地、家屋、償却資産を所有している方に、所在地の市町村(東京23区は都)から課される税金です。この税金は固定資産税評価額(固定資産税を計算する際の基準となる評価額)をもとに、課税標準額が算出されます。
【都市計画税とは?】
都市計画税は、市町村(東京23区は都)が条例で課すことができる税金です。固定資産税と一緒に賦課徴収されますが、償却資産は課税対象外です。
【税率の計算方法】
固定資産税: 課税標準額×税率(標準税率1.4%)
都市計画税: 課税標準額×税率(制限税率0.3%)
【免税点について】
同じ市区町村内の同一人が所有する固定資産の課税標準額の合計が一定額未満の場合、固定資産税は課税されません。
土地: 30万円未満
家屋: 20万円未満
償却資産: 150万円未満
(参考:横浜市ホームページ 固定資産税 土地・家屋・都市計画税)
【賃貸用不動産の場合】
相続した不動産が賃貸用不動産であった場合、または相続後に賃貸用として活用する場合には、家賃収入が発生します。その収入から必要経費を差し引いたものが不動産所得となり、所得税および住民税が課税されます。
不動産所得についての詳細は、国税庁の公式ページ「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」をご参照ください。
※URL貼る
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
2. 【相続時】登録免許税
相続した不動産を売却した場合、その売却収入から必要経費(取得費および譲渡費用)を差し引いたものが譲渡所得として扱われ、所得税および住民税が課税されます。不動産の譲渡所得は、申告分離課税(他の所得と合算せず分離して税額を計算する方法)によって課税されます。
【譲渡所得の計算方法】
譲渡所得は以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用 – 特別控除
譲渡価額: 不動産の売却額
取得費: 不動産を取得(購入)するのに要した費用
譲渡費用: 不動産を売却するために要した費用
特別控除: 各種特例の適用要件を満たす場合、譲渡所得から特別控除額を控除することができます(例: 空き家にかかる譲渡所得の特別控除)。
【税率】
税率は不動産の所有期間によって異なります。所得税率および住民税率は以下のとおりです。
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 9% |
長期譲渡所得(5年超) | 15% | 5% |
【相続による所有期間の引継ぎ】
相続によって不動産を取得した場合、亡くなった方が取得した日を引き継ぐことができます。これにより、譲渡所得税と住民税の計算において有利な長期譲渡所得の適用が受けられる場合があります。
3. 【売却時】印紙税と譲渡所得税
不動産を相続してその後売却する場合、いくつかの税金が発生します。代表的なものが印紙税と譲渡所得税です。
【印紙税】
不動産売買契約書を作成する際にかかる税金です。
税額は、契約書に記載される金額に応じて異なります。たとえば、1,000万円超5,000万円以下の契約書には1万円、5,000万円超1億円以下の契約書には3万円の印紙税がかかります。納税方法は、契約書に所定の金額の印紙を貼り、消印を行います。
【譲渡所得税】
不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合にかかる税金です。譲渡所得は、売却価格から取得費および譲渡費用を差し引いた金額で計算されます。
計算方法: 譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用 – 特別控除
譲渡価額:不動産の売却額
取得費:不動産を取得するのに要した費用(購入価格や購入時の手数料など)
譲渡費用:不動産を売却するために要した費用(仲介手数料や修繕費など)
特別控除:各種特例の適用要件を満たす場合に控除できる額(例: 空き家の特別控除など)
税率は、不動産の所有期間によって異なります。
有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 9% |
長期譲渡所得(5年超) | 15% | 5% |
所有期間の引継ぎ:相続によって取得した不動産は、被相続人(亡くなった方)が取得した日を引き継ぐことができます。これにより、譲渡所得税の計算において所有期間が長期となり、税率が低くなる可能性があります。
不動産を相続する際には、相続税評価額やそれを減額できる条件を理解することが不可欠です。形状が悪い土地や借地権が設定されている土地、広大な土地など、特定の条件を満たす不動産は相続税評価額を減額することが可能です。さらに、不動産の相続後には固定資産税や登録免許税、売却時には印紙税や譲渡所得税がかかるため、適切な税務処理が求められます。これらの知識を活用することで、相続に伴う税負担を最小限に抑えることができるでしょう。詳細な情報や具体的な手続きについては、国税庁の公式サイトや専門家に相談することをお勧めします。