住宅の耐用年数について理解することは、不動産売買の際に重要です。
住宅の資産価値は年月が経つにつれて変化し、その変化を知ることで将来的な購入や売却の判断がしやすくなります。
また、古い住宅を購入する際のメリットとデメリットもあわせて解説します。
耐用年数は、大きく分けて以下の3種類があります。
1.法定耐用年数(耐用年数) 特定の資産や設備の減価償却費用を算出するために国が決めた年数のことです。建物の種類や構造、用途によって一律に定められています。この法定耐用年数によって建物の資産価値を判定します。
2.物理的耐用年数 建物自体が劣化し、構造物の仕組みや材質の品質が維持できなくなるなど、実際に使用できなくなるまでの年数を指します。これは建物そのものの耐久性や劣化の度合いを考慮し、構造的な要素や材料の品質が低下することによって示唆される耐用年数です。
3.経済的残存耐用年数 不動産が実際にどの程度継続して使用でき、不動産としての価値が低下し、最終的になくなるまでの期間を示します。これは物理的な劣化だけでなく、将来的な補修や修繕費用、建物の機能の見込まれる寿命も考慮されます。 |
この3つの中で最も目にするのが法定耐用年数ですね。法定耐用年数によれば、木造は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造は47年とされています。
ここでひとつ注意していただきたいのは、法定耐用年数は税法の資産価値がゼロになるまでの年数を国が定めただけあって、実際に何年まで住めるのかを示しているわけではないという点です。法定耐用年数はあくまでも減価償却費※を算出する際に使うための数字で、法定耐用年数では22年や47年であっても、これ以上の期間も住み続けることが可能です。
※減価償却費とは?
詳しくは後述しますが、簡単に説明すると、『不動産の価値が減少することを考慮し、その減少分を毎年一定の割合で経費として計上すること』を減価償却費と呼びます。
1. マンション
マンションの税法上の耐用年数は、47年。コンクリート造だけあって、一戸建てに比べて耐用年数が長めです。
ちなみに、国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」によれば、鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命は推定で117年とされています。日本のマンションの歴史が浅いため、117年というのは推定に過ぎませんが、耐用年数である47年を過ぎてもなお、現役のマンションが多数存在しているのが興味深いですね。
先に説明したとおり、耐用年数は建物の寿命ではなく、税法上の資産価値がゼロになるまでの年数を示したものです。マンションの場合は特に寿命が長いので、耐用年数よりも資産価値で考えた方が分かりやすいかもしれません。
以下は、築年数による資産価値の変動をまとめたものです。
築10年以内: 新築の8割程度
築11~20年: 新築の6~7割程度
築21~30年: 新築の4割程度
築30年超: 新築の4割以下
マンションの資産価値は、築10年以内には新築の8割程度まで下落し、築15年頃には下げ止まります。マンションは築浅なほど需要が高まるため、売却を考える際には築6~15年の間が売り時とされています。購入後5年以内の売却は赤字になるケースは多いですが、マンションを売却するなら早めのご検討をおすすめします。
2. 木造一戸建て
木造住宅はメンテナンスや造り方によって寿命が左右されますが、22年を過ぎてもなお現存する住宅は数多く存在します。また、いくつかのハウスメーカーでは60年保証や100年住宅といった取り組みも見受けられます。
以下は、木造一戸建ての築年数による資産価値の動きをまとめたものです。マンションと比較すると資産価値の下落スピードが速いのでビックリする方も多いかもしれません。
築10年以内: 新築の5割程度
築11~20年以内:築15年で新築の2割程度
築20年超: 資産価値はほぼゼロ
一戸建ての場合はマンションに比べて資産価値の減少スピードが速く、築10年以内には新築の5割程度、築15年を目安に下落幅がゆるやかになり、新築の2割まで下落します。そして築30年を超えると建物部分の資産価値はほぼゼロとなります。残る資産価値は土地です。
しつこいようですが、上記は建物の寿命ではなく、資産価値です。いつまで住めるかを表した数字ではありません。この点を勘違いしてしまうと「一戸建てはマンションよりも早く住めなくなる!」という認識になってしまいます。
確かに耐用年数はマンションの方が長いですし、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が素材としては頑丈なのは間違いありません。しかし、管理状態によってはマンションよりも木造一戸建ての方が「建物としての状態が良好」なケースは多々あります。
耐用年数は、税法上の資産価値がゼロになるまでの年数を示したものだと説明しました。もっと専門的な言い方をすると、耐用年数とは、減価償却を算出するための指標です。ちょっと難しい内容ではありますが、知っておいて損なことではありません。特に不動産売却を検討されている場合は、耐用年数と減価償却の関係についても知識を身につけておく必要があります。
1. 減価償却とは
減価償却とは、建物の価値が減少することを考慮し、その減少分を毎年一定の割合で経費として計上することを指します。
減価償却は時間の経過とともに価値が減少する前提に基づいているため、土地は減価償却に含まれません。
2. 減価償却を使う時はいつ?
減価償却の計算が必要なケースは、主に以下の2つです。詳しく見ていきましょう。
1.賃貸収入で得た収入を確定申告する時
アパートやマンションの経営によって得た賃料収入は、不動産所得として確定申告が必要です。この不動産所得には所得税が課されますが、建物の価値が経年劣化する分を「減価償却費」として賃料収入から差し引くことができます。これにより所得税の節税が可能となりますので、減価償却費の計上を忘れずに行うことが重要です。
2.不動産を売却する時
不動産を売却して得た利益は「譲渡所得」として所得税や住民税の対象になります。この際、譲渡所得の計算には建物の取得費が必要です。土地は年月が経っても価値が減少しないので、購入価格がそのまま取得費になります。
取得費とは、建物の購入代金とそれに関連する諸費用の総額を指します。譲渡所得の計算式は、収入金額から(取得費から減価償却費を差し引いた額)と譲渡費用を差し引きます。
3. 減価償却の計算方法
不動産を住居用として取得した場合の減価償却計算方法を解説します。
減価償却には「定額法」と「定率法」という2つの方法があります。
・定額法 耐用年数の期間内において毎年一定の金額を減価償却する方法です。この方法では、年数が短いほど利益が残りやすい特徴があります。 計算式:減価償却費=取得価格×定額法の償却率 ・定率法 未償却の残高に対して毎年一定の割合を適用し減価償却する方法です。初期の方で多くの減価償却費がかかり、年々低減していきます。 計算式:減価償却費=未償却残高×定率法の償却率 |
償却率は国税庁「減価償却資産の償却率等表」で確認できます。
ここまで住宅の耐用年数や減価償却について解説しましたが、築年数が経過した古い住宅を購入するメリットもおさえておきましょう。
1. 新築よりも安く手に入る
新築の住宅は施工や設備が最新である一方で、その分価格も高額です。一方で、築年数が経過した古い家は、新築に比べて安く手に入ることがあります。
ただし、リフォームやメンテナンスに投資が必要な場合があるため、トータルのコストを検討することも重要です。
2. 物件数が豊富
家を建てられる土地は限られています。そのため、これから建つ新築の数よりも、今すでに建っている中古住宅の方が多いのは当然ですね。
中古住宅も視野に入れれば、選択肢がぐっと増えます。歴史や個性を感じることができる古い住宅も多く、自分の好みやライフスタイルに合った住宅を見つけやすい点もメリットです。
3. リノベーションを楽しめる
古い住宅は時間の経過とともに変化し、その歴史や個性が感じられます。古い建材やデザインを活かしながら、自分だけのオリジナルな住まいを実現することができます。
ただ、中古住宅購入+リノベーションを行うことで新築住宅よりもコストがかかる可能性もありますので、資金計画は慎重に行いましょう。
続いて、古い住宅を購入するデメリットを解説します。
1. 老朽化が気になる
古い住宅の場合、屋根や壁、設備だけではなく、電気配線や配管なども古くなっていることがあります。老朽化が進んでいる場合、メンテナンスやアップグレードにかなりの費用がかかる可能性があるため、注意が必要です。
老朽化のチェックは、一般の方には困難です。不安な方は、住宅診断(ホーム・インスペクション)を検討することをおすすめします。
2. 設備の機能性が新築よりも劣る
古い住宅は、新築に比べて最新の設備や機能が備わっていないことが一般的です。特に、キッチンやバスルーム、暖房設備などは年月が経つにつれて進化しているため、効率性や快適性において新しい物件に及ばないことがあります。
また、省エネ性やセキュリティの向上など、現代の住まいに求められる要件が満たされていない可能性もあります。
。
3. 将来売却しても売れにくい可能性がある
古い住宅は、耐用年数が進んでいるため、将来的に売却する際に魅力を保つことが難しい可能性があります。
同じ価格帯で新しい物件が出てきた場合には競争が厳しくなりますし、古い住宅には修繕やリノベーションが必要な場合があり、これにかかる費用も買い手にとってネガティブな要素となり得ます。
今回の記事では、主に住宅の耐用年数と古い家を購入するメリットデメリットを解説しました。繰り返しになりますが、住宅の耐用年数は、あくまでも減価償却費を算出する際に使うための数字で、実際に何年まで住めるのかを示しているわけではありません。
耐用年数を過ぎた家でも快適に住める住宅は多数あります。中古住宅を探している、という方はぜひ一度ミツバハウジングまでお問い合わせください。
不動産を売却する際、最も重要なのは売れやすいタイミングを見極めることです。この記事では、売却で成功するためのポイントと、物件を売りやすくするタイミングに焦点をあて、理想的な条件で不動産を売り抜くためのアドバイスをお届けします。
まずは、売却で成功するためのポイントを解説します。
1.不動産会社は査定額だけで選ばない
高い査定価格を出してくれたからといって、その不動産会社が優れているとは限りません。また、必ずしも売り出し価格と一致するわけでもありません。
不動産会社によって査定価格がバラバラなので、高い査定を提示した会社を選んでしまう気持ちは理解できますが、それは大きな間違い。売却を任せて欲しくて、相場より高い査定価格を提示する不動産会社も存在します。
査定額だけで判断せず、実績と信頼性を持つ不動産会社を選ぶことが重要です。
2.売却する希望価格と最低価格を決めておく
不動産を売却する際に多くの人が直面する難題は、「売りたい価格」と「売れる価格」の差です。少しでも高く売りたいのはみなさん同じで、実際に売れる価格とのギャップに悩みます。
売却で成功するために最初に考えるべきは「最低ライン」の価格です。これはローン残債や売却にかかる費用などを考慮した金額です。「これ以下の価格での売却は難しい」という最低ラインの価格を把握したら、それを基準にして「売りたい価格」や不動産会社の「査定額」と比較してみましょう。もし「最低ライン」よりも「査定価格」が低い場合は、売却自体を再考する必要があります。
3.売却理由は正直かつポジティブに伝える
家を売却する理由は、人によって様々です。物件そのものに問題がある場合や、転勤、離婚、子どもが自立後の住み替えなど、その理由はたくさんあります。
買主が購入を迷う売却理由として多いのは
・物件そのものに問題がある
・近隣に店や病院などがなくて不便そう
・騒音や日当たりに問題がある
・近隣の治安が悪い
などです。
これらの理由はネガティブなイメージに繋がりやすいですが、隠さずに正直に伝えましょう。その際は、物件のアピールポイントや、「こういう風に生活すると快適ですよ」といった具体的な提案をすることも重要です。
たとえば、この窓は西日がきついので遮光カーテンをつけると良いとか、少し歩くと安いスーパーがある、などといった提案です。隠すよりも物件のネガティブな面に向き合っている姿勢を示すと買主からの信頼を得られるでしょう。
特に離婚による売却は珍しくもなく、むしろ多いぐらいなので、隠す必要はありません。購入希望者の中には縁起をかつぐ方もいらっしゃるので、離婚で売却された物件は買いたくないという場合もありますが、隠すよりも正直に伝えた方がスムーズに売却が進む可能性が高いです。
4.知識を身につけて不動産会社に丸投げしない
不動産の売却手続きは基本的に仲介会社に委ねることができますが、売却での成功を望むなら、基本的な不動産売却の知識を身につけておくことが重要です。自身で売却の流れや物件の相場、周辺地域の情報の収集をしておき、不動産会社に完全に頼り切らないようにしましょう。
同時に、買主の視点を考慮することも重要です。物件の魅力や内覧時に注目されるポイント、不安や質問が出る可能性がある事柄などを買主目線で考え、それに基づいて物件を魅力的にアピールする工夫が求められます。
5.売れにくい物件は専任媒介契約で売る
「都市部から離れている」「駅からの距離が遠い」など、売れにくいと感じる物件には、専任媒介契約がおすすめです。
「売れにくい物件なら、複数の不動産会社と契約すれば早く売れるのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には専任媒介の方が多くの場合において有利なのです。
一般媒介契約では、複数の不動産会社が関与するため、売却に積極的に取り組みにくくなり、結果的に売却期間が延びる可能性があります。専任媒介契約では、売主が一社に売却を委託することで、その不動産会社が独占的に売却活動を行います。これにより、迅速な売却が期待できます。
6.物件をきれいにしておく
物件をきれいにしておくことは、査定や内覧の際にも大きな影響を与えます。
一見するだけで気持ちよく感じる清潔な状態は、買い手に好印象を与えるだけでなく、物件の魅力を引き立てます。床や壁、窓など、細部にわたり手入れを怠らず、不要な物は片付けることで、広々とした印象を醸し出します。
物件の魅力を引きてる方法としては、以下の方法があります。すべて実行できなくても、徹底的に掃除をして清潔感を大事にしましょう。
・荷物を一時的にトランクルームに預ける
家の中がきれいであっても、物が多いと魅力的に見えません。物が多い方は、一時的にトランクルームに預けることをおすすめします。
・ハウスクリーニングを頼む
内覧者がイメージダウンする原因として一番多いのは水回りの汚さです。費用はかかりますが、水回りだけでもハウスクリーニングを検討してみてはいかがでしょうか。
・水回りだけでもリフォームする
ハウスクリーニングよりもさらに費用はかかりますが、汚れや劣化がひどい場合は水回りだけでもリフォームしても良いかもしれません。バスルームを丸ごと新しくする場合、おおよそ150万円ほど。水回り全体を一新する場合には、約200万円程度の費用がかかります。
売り時を見逃さないためには、家の売却タイミングを見極めることが不可欠です。特に悩まれるのが「今、売却しても大丈夫なのか?」という疑問。この章では、家が売れやすいタイミングを解説します。
1.成約件数が多いのは3月
賃貸繁忙期は1~3月と言われていますが、売買においては季節よりも需要の変動が少ない傾向があります。
しかし、春は入学シーズンで引っ越しを考える人が多いため、12月後半~1月に物件を出すことが効果的です。この時期にPRを施すことで、早期に高値での売却が期待できます。
2.マンションと築15年以内の一戸建ては早めに売る
一戸建ては築10年、マンションは築15年を境に購入需要が急激に減少します。これは、物件が古くなるにつれてメンテナンスやリフォームの必要性が高まり、それに伴って購入に対するハードルが上がるためです。
特にマンションは新築時のプレミア感が強く影響します。築浅であればあるほど、その新しさと良好な状態が需要を高め、高値での売却を容易にします。築15年以内の一戸建ても、早めに売却を検討することで市場での競争力を保ちます。
以下は、築年数ごとのマンションと一戸建ての資産価値と需要についてのまとめたものです。マンションや築15年以内の一戸建てを所有している場合は、築浅の状態を活かし、早い段階で売却を検討すると良いでしょう。
マンションの場合
築年数 | 資産価値 | 需要 |
築10年以内 | 新築の8割程度 | 需要が多く高値で売れやすい。 |
築11~20年 | 新築の6~7割程度 | 劣化が気になる箇所が出てくる時期で、安く買いたい層に需要あり。 |
築21~30年 | 新築の4割程度 | 修繕やリフォームによって価格が左右される。 |
築30年超 | 新築の4割以下 | 人気エリアや利便性の高い物件は需要がありつつも、築浅の物件と比較すると資産価値が下がる。 |
一戸建ての場合
築年数 | 資産価値 | 需要 |
築10年以内 | 新築の5割程度 | 需要は高い。さらに、省エネ住宅や人気のハウスメーカーが建てた住宅は、資産価値の下落幅が緩やかになることがある。 |
築11~20年以内 | 新築の2割程度 | 築15年を目安に下落幅が緩やかになる。 |
築20年以内 | 新築の2割程度 | 建物部分の資産価値はほぼなくなり、「古家付きの土地」として土地のみの価格で売買されるのが一般的。 |
3.不動産価格が高騰している時に売る
一般社団法人不動産協会「不動産関連データ」によれば、首都圏のマンション価格は2022年に6,288万円となり、前年比で0.4%上昇しました。2018年の平均価格から見ても、5年間で7.1%の上昇があります。
特に注目すべきなのは、2021年時点で既に1990年の不動産価格バブル期を上回っているという点です。ただし、現在の値上がりは急激なバブルとは言えないため、1990年代のような急激な価格の下落は予測しづらい状況です。
このような背景から、不動産価格が高騰している時期は、売却時に高い価格で取引できる可能性が高まります。購入希望者が増加し、需要が高まる中で売却を検討することで、良い条件での取引が期待できます。しかし、市況は変動するため、慎重な計画と柔軟な対応が求められます。
家を所有していた期間が5年以下か5年超かで、所得税と住民税の税率が大きく異なります。
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
短期譲渡所得(5年以内) | 30.6% | 9% |
長期譲渡所得(5年超) | 15.315% | 5% |
上記の表を見ると分かるように、所有期間が5年以下か5年以上かで税率が約2倍もの差を生じます。特に注意が必要なのは、「5年以内」という認識の間違いです。所得税や住民税の計算は、「家を売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えていたかどうか」で判断されます。購入してからの住んでいた年数でなく、1月1日時点での所有期間が基準となるため、計算ミスには十分ご注意ください。
今回は、売却で成功するためのポイント売れやすいタイミングについて解説しました。
売却のお悩みは、ミツバハウジングまでご相談ください。地域に特化した強みを持っているだけではなく「マーケティング&広告専門チーム」が適切な媒体に販売活動を仕掛け、圧倒的な集客を行います。そして、販売力のある営業マンが売主様に代わり、売却をスムーズに進めさせていただきます。メールでもお電話でも、お気軽にお問い合わせください。
まずは、不動産売却する時の全体的な流れを説明します。
全体的な流れ | 期間(6ヶ月が目安) |
家の相場を調べる | 約2週間~1ヶ月 |
査定依頼をする | |
媒介契約を結ぶ | |
売り出し価格を決める | |
売却活動スタート | 約3ヶ月 |
内覧対応 | |
売買契約を結ぶ | |
引き渡し・決済 | 約1~2ヶ月 |
仲介で売却する場合、一般的に3~6ヶ月かかると考えておきましょう。
最初の段階では不動産会社の選定や査定依頼、媒介契約の締結に1~4週間かかります。その後、買主を見つけるための売却活動や内覧対応などが1~3ヶ月かかり、最終的に売買契約が成立します。取引が進んだ後も、物件の引き渡しと決済には1~2カ月ほどの期間が必要です。
ただし、買主探しが難航すれば、さらに時間がかかることもありますし、特定の不動産によっては隣接する不動産との境界線を明らかにするために測量が必要な場合もあり、その際も時間がかかる可能性があります。
売却活動の流れは、主に以下の8ステップです。
1.物件の相場を調べる
売却活動を始める前に、自分の物件がいくらで売られているのか相場を調べておきましょう。相場を調べるには、「レインズマーケットインフォメーション」と「土地総合情報システム」で調べる方法があります。
・レインズマーケットインフォメーションで調べる
レインズマーケットインフォメーションは、公益財団法人不動産流通機構が運営している全国の不動産取引情報を閲覧できるサイトです。通常の「レインズ」とは異なり、不動産会社に限らず一般の方も利用可能です。ただし、具体的な不動産取引の詳細情報は表示されず、成約時期や築年数などの詳細は伏せられています。利用者は以下の項目を調べることができます。
価格:百万円単位で表示され、十万円単位を四捨五入。 単価:万円/m2で表示され、小数点以下は四捨五入。 面積(建物・土地): 実際の面積に20m2の幅を持たせて表示される。面積が200m2を超える場合は「200m2超」と表示される。 築年数:実際の築年に2年の幅を持たせて表示される。 成約時期:成約された年月を3カ月で区切った範囲で表示される。 |
・土地総合情報システムで調べる
土地総合情報システムは、国土交通省が管理している不動産の取引価格や地価公示、都道府県地価調査の価格が閲覧できるサイトです。このサイトも、レインズマーケットインフォメーションと同じく、一般の方でも利用可能ですが、物件の詳細情報は非表示となっています。
掲載されている物件の内容には、「所在地」「最寄駅」「取引総額」「坪単価」「面積」などが含まれています。ただし、物件の所在地に関しては、町名までしか表示されません。
2.査定依頼をする
不動産会社の査定には、「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定」があります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
簡易査定…実際に不動産を見ずに、物件概要などから簡易的に査定する方法。
訪問査定…実際に不動産を見て査定する方法。
簡易査定は手軽で結果が素早く出ますが、訪問査定に比べて査定価格の正確性には限りがあります。一方、訪問査定は時間がかかる(1~2日後、最大でも1週間以内)ものの、より詳細かつ正確な査定が期待できます。
3.媒介契約を結ぶ
売却を仲介してもらいたい不動産会社が決まったら、媒介契約を結びます。媒介契約には以下の3種類があります。
・一般媒介契約
一般媒介は、不動産取引において売主が複数の不動産会社に同時に物件の仲介を委託する契約形態を指します。複数の不動産会社による同時仲介が可能であり、販売活動の競争を生む一方で、不動産会社側から見ると、「他社で成約してしまう可能性があるため売却活動に熱が入りにくい」という心理も存在します。
・専任媒介契約
特定の不動産会社にのみ売却の仲介を依頼する契約形態です。他の不動産会社に同時に依頼することはできません。この契約では、一つの不動産会社が専念的に販売活動を行うため、売却の進捗管理やマーケティングが一貫して行われるメリットがあります。
・専属専任媒介契約
一番厳格な契約形態で、特定の不動産会社に対して独占的に売却の仲介を依頼する契約です。他の不動産会社への依頼は一切認められません。自力で買主や借主を見つけたとしても、その取引は不動産会社を介したものとみなされ、仲介手数料が発生します。売主の自由度が制約される面もありますが、その分、売却が早く決まる可能性が高まるとも言えます。
4.売り出し価格を決める
売出し価格は「売主の希望価格」で、成約価格は「売買が成立したときの価格」です。売出し価格のまま売れるとは限りません。むしろ、中古物件の売買では値引き交渉されることが通常です。
相場と査定額を参考に、売り出し価格を決めていきましょう。値引きされることを想定して、価格設定を高めにする方もいらっしゃいますが、このような方法はあまりおすすめできません。
「この物件を買いたいけど、もう少し安くなりませんか」と購入希望者から価格交渉をされた時に値下げをして、結果的に売れるなら問題ないです。
しかし、実際には高い価格で売りに出したら購入希望者が現れないケースがほとんどで、そうなるとポータルサイトに載せてある売り出し価格を下げることになります。物件を閲覧している側から見ると、「売れ残り感」が出てマイナスイメージが強くなってしまいます。最初から相場に近い売り出し価格を設定しておきましょう。
5.売却活動スタート
いよいよ売却活動のスタートです。不動産会社が売却活動をする際、主に以下の方法で物件情報をPRします。
・不動産ポータルサイトへの掲載
主要な不動産情報サイトやポータルサイトに物件情報を掲載し、広く検索されやすくします。魅力的な写真や物件詳細などを掲載して、オンラインでの物件検索者にアピールします。
・物件チラシのポスティング
不動産会社が作成した物件チラシを地域のポスティングに活用し、興味を引くような情報をわかりやすく掲載します。
PR力がない不動産会社は、掲載する写真が下手だったり、物件のアピールポイントを魅力的に説明できなかったり、ポスティングの数も少ないことがあります。いくら物件が魅力的であっても、売却活動が適切でなければ買主は現れません。
特に一般媒介の場合は、「他社で成約するかもしれない」という不動産会社側の心理が働き、売却活動に熱が入りにくいことがあります。
6.内覧対応
中古物件の購入希望者の多くは、古くて生活感がある物件が欲しいわけではなく、「できるだけ新築に近いきれいな物件」が欲しいと考えています。ご自身がフリマアプリなどで商品を買う時の心理を思い出すと分かりやすいでしょう。
たとえ築年数が古くても、きれいに管理してある物件は好印象です。逆に言えば、築浅の物件であっても管理や清掃が行き届いていなければ、買い手はなかなかつきません。
特に注意したいのは、水回りです。できればプロに頼んでクリーニングしてもらいましょう。とにかく生活感をなくすことが重要です。掃除ももちろんですが、物が多いのもいけません。物が多い方は断捨離をするか、一時的にトランクルームに預けるのもおすすめです。
7.売買契約を結ぶ
買主との交渉がまとまったら売買契約を結びます。契約書の内容を確認し、不動産の基本情報や売買金額、引き渡し日、その他の条件に誤りがないかを確認しましょう。
また、買主から手付金をこの段階で受け取ります。手付金の金額は買主との協議に基づきますが、通常は売買価格の10%が相場です。残りの金額は引き渡しの際に受領します。
買主だけではなく、売主も支払う費用があります。代表的な費用は仲介手数料です。不動産会社に売却活動をしてもらい、成約となった場合は、不動産会社に仲介手数料を支払います。仲介手数料の上限は、以下の表のとおりです。
売買価格(税込) | 料率(税抜) |
200万円以下の部分 | 5% |
200万円超400万円以下の部分 | 4% |
400万円超 | 3% |
不動産の売買取引では、200万円を超えることが多いかと思います。そのため、仲介手数料は「売買価格×3%+6万円+消費税」となります。
仲介手数料を支払うタイミングは、売買契約が成立した時点で50%、引き渡し完了時に残りの50%を支払います。
8.引き渡し・決済
通常、売買契約から約2週間から2ヶ月後に、引渡しと決済が同日に執り行われます。場所は買主の住宅ローンが取り決められた金融機関で、平日の午前中に実施されることが一般的です。
・引渡し 買主が売主に売買代金を支払い、売主は売買代金の受領と引換えに買主に物件を引き渡します。引渡しといっても物件そのものは動かすことができないため、当日は家の鍵や書類の受け渡しを行います。 ・決済 買主が売主に売買代金(手付金を引いた残代金)を支払います。住宅ローンを利用する場合は、指定口座に入金されます。 |
引き渡しの際、具体的に渡すものは以下のとおりです。
・物件の鍵
・新築時の図面一式
・設備のパンフレットや説明書
・建築確認通知書
・マンションの場合は組合規約
今回は、不動産売却時の流れを詳しく解説しました。売主は買主に比べて必要な書類が多く、物件の退去作業なども迅速に進める必要があります。引渡し日に向けて計画を立てる際には、充分な準備とスケジュールの調整が欠かせません。引渡し日を基準に逆算して、早めに行動しましょう。
家を買うのは、ファミリー層だけではありせん。少子化や晩婚化の影響からか、独身者で家を購入するケースも増えています。
今回は、独身で家を購入するメリットデメリットや購入する時のポイント、購入するならマンションと一戸建てのどちらが良いのかなどを解説します。
独身者が家を購入する際に向いている特徴は、個々の状況や希望によって異なりますが、一般的な考慮事項は以下のとおりです。
・家賃がもったいないと感じる人
賃貸では毎月家賃が発生しますが、持ち家の場合は住宅ローンの返済がかかります。両者とも毎月の住居にかかる費用は固定ですが、持ち家の場合は自分の資産に投資していることが大きな違いです。
独身者が1人暮らしの場合は、比較的低い家賃の物件を選ぶことが一般的ですが、何十年も続く家賃支払いは結局高額な出費になります。そのため、賃貸の家賃がもったいないと感じる人は、結果的に家を購入することを選ぶ傾向があります。
・経済的に安定している人
家を買う時は住宅ローンを利用する方が多数です。そのため、社会的な信用が高く、信用情報に問題がない経済的に安定している独身者が、家の購入を決断しやすい傾向があります。
独身で家を購入するメリットをみていきましょう。
1.老後も住居の心配をしなくて良い
独身者が家を購入する魅力の一つは、老後において住居の心配をしなくて良いという点です。老後は、定期的な収入が減少することが一般的です。しかし、住宅ローンさえ完済できればあとは毎年固定資産税を払えばよいだけです。自分の家を所有していれば、住居費の支出が相対的に安定しやすくなります。
2.自分の資産になる
賃貸ではどれだけ家賃を支払っても物件は自分のものになりませんが、持ち家は資産として残ります。将来的には家を売却して現金化するか、そのまま家賃収入として利用することもできます。
3.賃貸よりも広い家に住める可能性がある
購入する際、家賃と比べてローンの月々の支払いの方が安くなることがあり、これにより賃貸よりも広い家に住める可能性があります。
独身向けの狭小住宅なら敷地面積が狭いので、税金負担が軽減できるのも魅力的です。
独身で家を購入する時にはデメリットもあります。
1.転勤や異動があった場合、住み替えが大変
独身で家を購入する際のデメリットとして挙げられるのは、転勤や異動が発生した場合、住み替えが大変であることです。
購入した家を手放すためには、売却手続きや市場動向の調査が必要となり、これが時間と手間を要することがあります。そのため、独身者が家の購入を検討する際には、将来の転勤や異動の可能性にも注意を払う必要があります。
2.今後結婚した場合、家が狭く感じる
独身の時点でのライフスタイルに合わせて選んだ家が、家族構成の変化に伴い不十分になることがあります。
この場合、新しい住まいを検討するか、現在の住まいをリフォームする必要が生じ、これには追加の手間や費用が発生する可能性があります。パートナーがいる方は、購入の際に将来の変化を見越して検討することが重要です。
3.経済的負担を感じる可能性がある
住宅ローンや維持費、固定資産税など、家を所有するにはさまざまな経済的な負担がかかります。独身者がこれらの費用を払うには、収入や将来の経済状況に対する十分な計画が必要です。思いがけない出費や経済的な変化に備え、慎重な検討と資金計画が欠かせません。
独身で家を購入する時におさえておきたいポイントをいくつか説明します。
1.利便性の高いエリアを選ぶ
独身者が家を購入する際の重要なポイントの一つは、利便性の高いエリアを選ぶことです。
購入する住まいが交通アクセスや生活インフラに恵まれた場所に位置していると、仕事や趣味の活動、日常生活がスムーズに行えます。たとえば、医療施設、飲食店、ショッピングモール、公園などが揃っていると、生活の質が向上し、将来的な住み心地も期待できます。また、将来的な転勤や生活スタイルの変化にも柔軟に対応できるよう、検討段階で地域の発展性や魅力を確認することも大切です。
2.セキュリティがしっかりとした物件を選ぶ
特に、女性の一人暮らしの場合は、セキュリティが万全な物件を選びましょう。オートロック完備などセキュリティ面で安心なマンションがおすすめです。一戸建ての場合は、自分でセキュリティ対策をすることも大切ですが、治安の良いエリアを選ぶようにしましょう。
3.将来、売却や賃貸に出すことも考えておく
デメリットでも述べましたが、今の時点では独身であっても、結婚によって、家が手狭に感じられる場合もあるでしょう。その際、持ち家を手放すか賃貸に出す可能性があることも視野に入れておく必要があります。独身で家を買う際は、将来的にスムーズな不動産取引を行えるよう、資産価値や市場動向に注意を払うことも重要です。
独身者が選ぶ持ち家といえば、マンションというイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、一戸建てという選択肢もあります。この章では、独身者にとってのマンションと一戸建てのメリットデメリットを説明します。
1.独身者にとってのマンションを購入するメリットデメリット
独身者がマンションを購入する場合、どちらかというとメリットの方が多いかと思います。賃貸経験者は分譲マンションでもスムーズに生活リズムを築けるでしょう。
まず、メリットとして挙げられるのは利便性の高さです。マンションは都心部に位置することが多く、交通アクセスに優れています。オフィス街や多様な生活施設へのアクセスが容易であり、共用施設の利用やセキュリティ面の強化、24時間利用できるゴミ捨て場など、生活の快適さを向上させる仕組みも整っています。
さらに、マンションは一戸建てと比較して資産価値が安定しやすいという特徴もあります。不動産市況の変動にも比較的強く、将来的な売却や賃貸においても柔軟に対応できます。
一方で、マンションの購入にはデメリットも検討しなければなりません。まず、管理費や修繕積立金などの共益費用が発生するため、ランニングコストが高くなりがちです。車を所有している場合は、マンション内か外部の駐車場を借りることになりますので、その費用もかかります。
2.独身者にとっての一戸建てを購入するメリットデメリット
一戸建てはファミリー向きのイメージがありますが、独身者に適した一戸建ても多数あります。イメージだけで選択肢から外してしまうのはもったいないですよ。特に車を所有している方やDIYを楽しみたい方には一戸建てがおすすめです。
まず、メリットとして挙げられるのは、狭小住宅なら比較的手頃な価格で購入できる点です。小さい敷地や建物なら、マンションに比べてコストが低くなり、手ごろな価格で不動産を所有することができます。
また、一戸建てはマンションに比べてプライバシーが確保しやすく、ペットの飼育やDIYなども自由に楽しめるメリットもあります。駐車スペースがある物件なら、駐車場を借りる手間と費用も不要です。
一方で、一戸建ての購入にはデメリットも考慮しなければなりません。まず、メンテナンスや修繕が個人の責任となるため、予期せぬ出費が発生する可能性があります。また、狭小住宅を買ったとしてもマンションよりは土地や建物の広さが増すため、掃除や管理が手間となり、時間の制約が生じることも考えられます。
さらに、移動やアクセスの面では、一戸建てはマンションに比べて効率が悪い点と、将来的に売却や賃貸に出す場合は、マンションよりも需要が少ない点もデメリットとして挙げられます。
独身で住宅ローンを組む際には、注意が必要なポイントがいくつかあります。
・返済計画は慎重に
独身者であっても既婚者であっても同様ですが、住宅ローンを組む時は、将来の安定収入を見据え、返済計画を慎重に考える必要があります。収入が不安定である場合や将来の収入見通しが立てにくい場合は、無理な借り入れは避けるべきです。
・自分だけの信用や収入で審査される
独身者は世帯収入が自分1人の収入と同等であるため、収入の水準が重要な審査要素となります。高い収入を持つ方は有利ですが、共働き世帯よりも不利な側面もあります。
・緊急時のリスクに備えておく
団体信用生命保険に加入していれば、万が一のことが起こった場合、住宅ローンはゼロになります。しかし、病気や怪我、リストラなどで失業してしまう可能性は誰にでもあります。共働き世帯であれば、パートナーに支えてもらえますが、独身者は自分一人で対応しなければなりません。緊急時に備え、保険の加入や緊急時のファイナンシャルプランを立てておくことをおすすめします。
今回は、独身で家を購入するメリットデメリットを解説しました。家を購入することを選択したとしても、どんな物件を購入すればよいのか分からないというお悩みはよく耳にします。ミツバハウジングでは、賃貸物件のご案内は出来かねますが、独身者向けのマンションや一戸建てのご案内やご相談は随時承っております。メールでもお電話でも構いません。お気軽にお問い合わせください。
フラット35と民間ローンは異なる特徴を持っています。これらの違いを理解することは、住宅購入やローン選びにおいて重要です。この記事では、両者の違いやポイントを詳しく解説していきます。
まずは、金利の仕組みをおさらいしておきましょう。
【金利のタイプ】
特徴 | メリット | デメリット | 向いている人 | |
変動金利型 | 借入期間中に金利が変動する。原則として、半年ごとに金利が見直され、5年ごとに返済額に反映される。 | ・固定金利よりも金利が低い ・金利が上昇しなければ固定金利よりも返済額は少ない | ・金利上昇のリスクがある ・金利が上昇すれば、返済額が高くなる | ・金利の動向をこまめに確認できる人 ・返済期間が短い、借入金額が少ない人 ・金利が上昇して返済額が増えても経済的に余裕がある人 |
全期間固定金利型 | 借入期間中、ずっと金利が変わらない。 | ・返済額が変わらないので将来のライフプランがたてやすい ・金利が変わらない安心感 | ・変動金利よりも金利が高い ・今後、金利が低くなれば変動金利よりも返済額が多くなる | ・安定した資金計画を立てたい人 ・今後、教育費などで支出が多い人 |
固定期間選択型 | 3年、5年、10年など固定金利の期間が決まっていて、期間終了後に適用金利を選択する。 | ・固定期間中は毎月返済額が増えない安心感がある ・固定期間経過後に金利が下がっていれば、低い金利を享受できる | ・固定する期間が長くなればなるほど、金利は高くなる ・固定期間経過後に金利が上がっていた場合、返済額が増える | ・教育費がかかる一定時期だけ返済額を安定させたい人 ・車のローンなど、返済が重なる時期だけ返済額を抑えたい人 |
【返済方式】
住宅ローンの返済には「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類があります。名前が似ているものの、中身はかなり異なります。
元利均等返済:月々の元金と利息の合計額を一定に保ちながら返済していく方法です。合計額が一定なので、支出の計算が容易です。ただし、元金の返済ペースが元金均等返済よりも遅いため、総支払額は多くなります。
元金均等返済:月々の元金の返済額を一定に保ちながら返済していく方法です。元金の返済スピードが速いのが特徴で、借入当初の月々の返済額は多くなりますが、元金を早く返済したい方には向いています。
1.住宅ローンの種類
公的ローンと民間ローンの特徴は以下のとおりです。
・公的ローン
国や自治体などが提供する住宅ローンです。「財形住宅融資」「自治体融資」が該当します。
・民間ローン
民間の銀行や保険会社などが提供する住宅ローンです。都市銀行・地方銀行、信用金庫・農協など、各金融機関が提供しているローンの他、不動産会社やハウスメーカーが金融機関と提携している「提携ローン」が該当します。
特徴は以下のようになります。公的ローンに分類される自治体融資については、自治体によって融資の条件が異なります。各自治体のホームページなどで確認ください。
公的ローン(財形住宅融資) | 民間ローン | |
審査 | 比較的ゆるい | 比較的厳しい比較的厳しい |
勤続年数 | 規定なし | 2〜3年以上 |
年収 | 規定なし | 200〜400万円以上 |
ローンの取引履歴 | 民間ほど重視しない (直近3ヶ月の間に延滞があると不可) | 非常に重視する (過去2年間に2回以上の延滞があると不可) |
選択金利 | 期間選択型固定金利 | 変動金利 全期間固定金利 期間選択型固定金利 ミックス型 |
借入限度額 | 4,000万円(財形住宅融資) | 最大1億円 |
年齢制限 | 満18歳以上66歳未満(財形住宅融資) | 65歳 |
団信の加入 | 任意 | 加入 |
物件の技術基準の審査 | あり | なし |
2.フラット35は行政が運営するローン
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して扱っている住宅ローンで、公的ローンと民間ローンの中間的な存在です。
フラット35の特徴を挙げると、主に以下の4つが大きなポイントとなります。
次項で詳しく解説します。
それでは、フラット35と民間ローンの違いを解説します。
1.審査基準
フラット35と民間ローンの違いは、審査基準において顕著に現れます。
民間ローンでは、返済負担率だけでなく、勤続年数や勤務形態も審査対象となり、収入の安定性が強く重視されるため、審査が通りにくいことがあります。一方で、フラット35は借り手の信用履歴や収入などには柔軟な審査が行われつつも、不動産の価値や担保価値には高い基準が設けられています。これは、「長期間、安全に住める住宅を増やしたい」という住宅金融機構の意向によるものです。
フラット35の審査基準についてはこちらからご確認ください。
申込要件
https://www.flat35.com/loan/flat35/conditions.html
【フラット35】の対象となる住宅・技術基準
https://www.flat35.com/loan/tech.html
2.金利
民間の住宅ローンでは変動金利型や固定期間選択型から返済方法を選べますが、フラット35は全期間固定金利が唯一の選択肢です。
さらに、フラット35は、頭金が1割用意できない場合は、金利が更に上昇することになります。具体的な金利の違いは、以下のようになります。
借入期間 | 15~20年 | 21~35年 |
フラット35 (頭金1割以上) | 年1.430% | 年1.910% |
フラット35 (頭金1割未満) | 年1.570% | 年2.050% |
※2023年12月適用金利
選択できる金利が固定だけなので、変動金利と比べると返済額が高くなってしまいます。フラット35の2023年12月時点での金利と民間ローン(みずほ銀行)の変動金利型と比較をしてみましょう。
適用金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 (諸費用は除く) | |
フラット35 | 年1.910% | 88,198円 | 40,043,406円 (頭金300万円含む) |
民間ローン(みずほ銀行:ネットローン) | 年0.375% | 76,229円 | 32,016,270円 |
総返済額の差額 | - | ▲11,969円 | ▲8,027,136円 |
借入金額3,000万円・返済期間35年間
フラット35の場合、頭金を1割(300万円)用意しても毎月の返済額は民間ローンよりも毎月1万円ほど高くなります。さらに総返済額の差額は800万円となります。固定金利なので安定感はありますが、少しでも返済額をおさえたいという人には民間ローンの変動金利型の方が向いています。
3.団体信用生命保険
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害に陥った場合に、ローンの支払いが免除される保険です。
フラット35では、団体信用生命保険(団信)への加入は任意ですが、民間ローンでは団信に加入しなければ住宅ローン契約が成立しません。
高齢者や健康に不安のある方にとっては団信に加入しなくてもフラット35が利用できるという利点があります。ただし、もしもの場合に備えて生命保険でカバーすることも重要です。生活状況や健康状態に合わせて、適切な保険に加入することをおすすめします。
フラット35で加入できる団信は以下の2タイプです。
・新機構団信
・新3大疾病付機構団信
新3大疾病付機構団信は、基本プランの「新機構団信」と医療と介護の保障が加わったタイプの団信です。詳しくはこちらからご確認ください。
4.保証料
民間の住宅ローンでは保証料が無料の場合もありますが、通常は借入金額の約2%が相場とされています。さらに、審査の結果に応じて、連帯保証人などが求められることもあります。それに対し、フラット35は保証料も不要で保証人も不要です。
ちなみに、融資を受ける際の事務手数料については、金融機関ごとに異なる設定があります。フラット35と民間ローン、どちらが高いかは一概に言えません。事務手数料の相場は、借入金額の約2%程度か、あるいは3万円から30万円の範囲で設定される場合もあります。
次に、フラット35のメリットデメリットをみていきましょう。
1.フラット35のメリット
メリットは以下のようになります。
・金利が変わらない固定金利なので資金計画が立てやすい
フラット35は全期間が固定金利型しか選択できないため、返済中に金利の変動リスクを受けません。この特徴から、変動金利や固定期間選択型の住宅ローンと比較して、より計画的な返済が可能です。
・団体信用生命保険に加入しなくてもよい
フラット35では、団信への加入が任意となっているため、健康に不安がある方でも安心して住宅ローンを組むことができます。団信に加入しない場合は金利が引き下げられ、その結果、住宅ローンの返済額も軽減されます。この柔軟性が、フラット35の魅力の一つと言えるでしょう。
・個人事業主や転職直後の人でも審査に通りやすい
フラット35は、民間ローンに比べて審査が緩い傾向があります。年収基準や返済負担率などの条件をクリアすれば、個人事業主や最近転職したばかりで勤続年数が短い方でも審査に通りやすいとされています。
2.フラット35のデメリット
続いて、デメリットです。
・変動金利型よりも金利が高い
フラット35の最も大きなデメリットは、適用金利の高さです。変動金利型と比較すると、フラット35の金利は高めなので、現在の超低金利が返済終了まで続く場合は、変動金利を選んだ方がお得になります。
・住宅に対する審査基準が厳しい
フラット35の審査は借入者に対しては比較的緩い傾向がありますが、一方で購入対象となる住宅には厳しい基準が適用されます。住宅金融支援機構が定めた技術基準をクリアする必要があり、これを確認するためには指定機関による物件検査が不可欠です。建築基準法に基づく検査済証を入手するため、手数料が発生し、これは個人負担です。もし技術基準を満たせない場合、フラット35を利用することは難しくなります。
ただし、省エネ性能や耐震性、バリアフリー性、耐久性などの性能基準をクリアした住宅であれば、金利を引き下げられる「フラット35S」を利用することができます。これにより、より良い住宅を手に入れる際の負担が軽減されます。
・繰り上げ返済の最低金額が高い
現在、多くの銀行では1円からの繰り上げ返済が可能となっています。しかし、フラット35の場合は、ネット銀行を含む様々な銀行で最低10万円、窓口での繰り上げ返済は最低100万円からとなっています。ただし、手数料は無料なため、まとめて繰り上げ返済を行う場合にはデメリットはほとんどありません。
今回はフラット35と民間ローンの比較に焦点を当て、それぞれの特徴や違いについて解説しました。購入者の状況やニーズによって最適な選択肢が異なるため、この情報を基に検討を進め、理想の住宅ローンを見つけていく手助けとなれば幸いです。