相続方法はどのようなものがあるのか分からないという方も多いかと思いのではないでしょうか。相続には、不動産を売却しないという選択もあります。
1.現物分割…遺産をそのままの形で分割する
現物分割は、遺産をそのままの形で相続人に分配する方法です。
一戸建てやマンションのような建物を分配することは物理的にできないため、「長男が家、次男は銀行預金」といった方法で分配されるケースが一般的です。
●現物分割のメリット
・不動産を残せる
・公平な分配ができる
・相続税の負担を軽減できる可能性がある
遺産を物理的に分割することで、相続人間の権利や所有権を明確にし、公平な分配が可能となります。また、分割によって相続税の負担を軽減することができる可能性もあります。
●現物分割のデメリット
・公平に分配することが難しい
・協議がまとまらず、トラブルになる可能性がある
相続人の間で公平な分割を実現するのは困難なことがあります。たとえば、相続人が3人で遺産が土地のみの場合、その土地を3等分することは容易ではありません。また、相続の間で遺産の選定や取得方法について意見の相違が生じ、分割の決定が複雑化することがあります。
●現物分割が向いているケース
・他の相続人の理解を得やすい環境(実家に居住している長男がそのまま実家を相続する場合や、配偶者が自宅を相続する場合など)
・不動産が複数ある、預貯金などの遺産がある、現物分割を行っても相続人間の公平性が保たれるケース。
2.換価分割…売却してお金に変える
換価分割は、不動産を売却し得られた資金を相続人全員に公平に割り当てます。この方法は、不動産の物理的な分割が難しい場合や、相続人の間で遺産の利用や管理について合意が得られない場合に利用されます。
●換価分割のメリット
・公平な分配ができる
・不動産維持管理が不要になる
不動産などの換金性が低い資産を売却し、分割しやすい現金に換えることで、遺産分割割合に応じた公平な分配ができます。
●換価分割のデメリット
・不動産の売却がスムーズに進まないことがある
不動産の売却に時間がかかる、または売却そのものが難しいケースがあり、それによって相続手続きが長引く可能性があります。
●換価分割が向いているケース
・不動産維持管理が負担
・相続財産の中に、相続人全員が相続を希望しない遺産がある
・相続税の支払いに必要な資金は別途確保されており、不動産を売り急いでいない
3.代償分割…相続人が超過分をお金で支払う
代償分割とは、一部の相続人が相続分を超える財産を一時的に相続し、その代わりに、超過分を他の相続人に金銭で支払う方法です。一部の相続人が土地や建物を受け取ることで、不動産資産の価値を保ち、将来の世代に受け継ぐことができます。
●代償分割のメリット
・遺産分割をスムーズにできる
・公平に遺産分割ができる
代償分割のメリットは、遺産をそのままの形で分割でき、公平な遺産分配ができる点です。これにより、分割が難しい資産も適切に分配され、相続人間の対立や紛争を回避できます。
●代償分割のデメリット
・超過分を支払う相続人に相応の資金力が必要
・超過分の算出でトラブルが起きることがある
・贈与税・所得税が発生することがある
超過分を支払う相続人の資力が必要となり、超過分が支払えないと代償分割が成立しません。また、相続人間で超過分の支払い方に関する意見の相違が生じ、トラブルの原因となる可能性があります。さらに、超過分の支払いに関連する所得税や贈与税がかかる場合もあります。
●代償分割が向いているケース
・遺産が不動産しかない(預貯金などの流動資産が少ない)
・相続人全員が自身の相続分を望んでいる(相続人が特定の財産(自宅・自社株式などを引継ぎたい)
4.共有分割…遺産を相続人全員のものにする
共有分割とは、遺産を複数の相続人で共有する方法の一つです。共有された財産は、所有者全員によって共同管理され、利益や費用が共同で分担されます。
共有分割は、遺産を均等に分割するのではなく、共有して所有することで相続人間の合意を得やすくし、相続財産の管理や取引を円滑にすることを目的としています。
●共有分割のメリット
・遺産を簡単かつ公平に分割できる
・財産を維持しやすい
・相続税負担が軽減される可能性がある
遺産を簡単かつ公平に分割できるため、財産の管理や維持が容易になります。また、遺産が分割されるため、相続税の計算基準が低くなり、税金の負担が軽減される可能性もあります。
●共有分割のデメリット
・遺産管理の調整が必要
・協議がまとまらず、トラブルになる可能性がある
・不動産の売却や処分が制限される場合がある
遺産の売却や処分に関しては、全ての相続人の合意が必要となるため、遺産の取引や維持に関するトラブルが生じる可能性があります。特に不動産の売却や処分においては、全ての相続人の同意が必要とされるため、財産の売却や処分が制限される可能性があります。
●共有分割が向いているケース
・相続財産が複数の相続人によって共有されるケース
・相続人全員が財産の共有を希望しており、相互に信頼関係がある
・遺産の分割が難しい場合や、売却や処分が困難な財産が含まれるケース